こんな症状はありませんか?(前立腺肥大症のセルフチェック)
50歳以上の方で、以下の症状が頻繁に出現する場合、前立腺肥大症の疑いがあります。
- 夜間に2回以上、トイレのために起きる
- おしっこをした後に2時間以内にもう一度排尿をしたいと感じることがある
- おしっこの途中で、尿が途切れる
- おなかに力を入れないと、おしっこが出にくい
- おしっこをした後に、まだ尿が残っているように感じる
当てはまる項目がある方は、一度ご相談ください。適切な治療を行うことによって、これらの症状が改善される可能性があります。
前立腺肥大症とは
前立腺は、男性に特有の臓器で、膀胱の出口にある尿道をドーナツ状に取り囲んでいます。正常な前立腺の大きさは小粒のイチゴ大(15~20ml程度)です。しかし、年齢とともに前立腺は大きくなり、キウイフルーツやアボカドのような大きさに肥大することがあります。
この肥大した前立腺が尿道を圧迫するため、尿の通り道が狭くなります。その結果、初期段階では膀胱が過剰に刺激され、頻尿(頻繁にトイレに行く)や夜間頻尿(夜中に何度もトイレに起きる)、残尿感がある、などの蓄尿症状が出現します。また、尿がスムーズに出ない、勢いが弱いなどの排尿症状が現れます。さらに、肥大が進行して長年にわたり慢性的に尿が出にくい状態が続くと、膀胱の弱い部分に憩室を作ったり、尿が全く出なくなり溢流性尿失禁(尿があふれ出る)を生じたり、腎臓の機能障害や尿路感染、膀胱結石を生じたりすることがあります。
診断について
前立腺肥大症が疑われる場合、排尿チェックシート、超音波検査による前立腺体積の測定、尿流測定、血液検査(PSA)の結果などをもとに治療方針を決定します。
適切な治療を行うことによって、これらの症状が改善される可能性が高いため、悩まれている方はまずはご来院ください。
前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも前立腺に起こる病気ですが、別のものです。前立腺肥大症は、肥大した前立腺が尿道を圧迫することで排尿の症状があらわれる病気です。当院では、診断の際に血液検査(PSA)を行い、前立腺がんの可能性についても確認しています。
前立腺肥大症リーフレットPDF
治療について
前立腺肥大症の治療は、「薬物治療」と「手術治療」に分けられ、一般的に薬物治療から開始します。
薬物治療
比較的症状が軽い場合は、薬物治療からスタートするのが一般的です。さまざまな種類の薬がありますが、前立腺の大きさや症状、常用薬の内容によって、医師が薬を選択します。症状の改善度を確認しながら、別の種類の薬に切り替えたり、併用したりすることがあります。
| 薬の種類 | はたらき | 起こりうる副作用 |
|---|---|---|
| アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬) | 前立腺と膀胱の出口の筋肉の緊張を和らげて、尿を通りやすくします。 | 射精障害、起立性低血圧(めまい)、頭痛など |
| ホスホジエステラーゼ阻害剤(PDE5阻害剤) | 前立腺や尿道の筋肉の緊張を和らげて、尿を通りやすくします。 | 消化不良、頭痛など |
| 5α還元酵素阻害薬 | 男性ホルモンの働きを弱めることで、6か月程度かけて前立腺を縮小させます。 | 勃起障害、射精障害、性欲低下など |
| β3作動薬 | 膀胱の筋肉を緩めることで、頻尿や尿意切迫感を改善します。 | 高血圧など |
| 抗コリン薬 | 膀胱の過剰な収縮を抑えることで頻尿や尿意切迫感を改善します。 | 口腔内乾燥、便秘 |
| 漢方薬・植物製剤 | 必ずしも効果が得られるとは限りませんが、副作用が少ない薬です。 | ― |
※実際に処方する薬剤は、症状や体質に応じて医師が判断します。慎重投与・禁忌となる場合があるため、詳しくは診察時にご確認ください。
手術治療
薬物治療だけでは症状の改善が得られない場合や、尿路感染、尿閉(おしっこが全くでない状態)、膀胱結石、腎機能の障害がある場合、手術治療が選択されます。
現在では内視鏡による手術が主流で、開腹手術に比べて体の負担が少ないのが特徴です。肥大した前立腺組織を、電気メスで切除する術式、レーザーを使用して前立腺組織をくり抜く術式、蒸散させる術式などを用いて、前立腺内の尿道を広げます。これらの手術は、すべて保険収載されている術式で、医療施設の設備や術者の習熟度を考慮して選択されます。
当院の特徴
先端のロボット手術と、2つの新たな低侵襲手術を提供します
性機能が温存できて術後の合併症も少ないロボット手術や低侵襲手術を実施しています。患者さんの状態(年齢、生活環境、併存疾患など)や前立腺の大きさに配慮して、従来の経尿道的前立腺切除術を含め4種類の手術治療を提供します。
- ロボット手術…アクアブレーション治療
- 低侵襲手術…経尿道的水蒸気治療(WAVE / Rezum)
- 低侵襲手術…経尿道的前立腺吊り上げ術(Urolift)
- 従来術式…経尿道的前立腺切除術(TURP)
紹介状なしで受診が可能です
一般的に、総合病院ではかかりつけ医からの紹介状が必要ですが、当院では紹介状がない方でも受診が可能です。また、週3日、外来を設けており、通院しやすい環境です。身近なかかりつけ医を受診するときと同じように、気軽にご相談ください。
安全性に配慮した手術をスピーディーに実施
おおむね1~2ヵ月以内には安全性に配慮した手術を実施することができます。手術時間が短く、麻酔の時間も短いため、体への負担が少ないのも特徴です。
受診から手術までの流れ
- 初診:紹介状がなくても受診いただけます。症状やこれまでの経過、現在服用中のお薬についてお伺いします。
- 検査:排尿チェックシート、超音波検査による前立腺体積の測定、尿流測定、血液検査(PSA)を行います。
- 治療方針のご説明:検査結果をもとに、薬物治療から始めるか手術治療を行うかをご相談します。手術の場合は、前立腺の大きさや年齢、併存疾患などをふまえて術式をご提案します。
- 手術日の決定:おおむね1~2ヵ月以内に手術を実施できます。
- 手術・入院:術式により、日帰りから4泊5日程度です。
先端手術
4種類の術式の比較
| 項目 | アクアブレーション治療 (ロボット手術) | 経尿道的水蒸気治療 (WAVE / Rezum) | 経尿道的前立腺吊り上げ術 (Urolift) | 経尿道的前立腺切除術 (TURP) |
|---|---|---|---|---|
| 手術時間 | 前立腺の大きさがアボカドのように大きくても、切除時間は10分以内で切除可能です | 手術時間は約5分で、全身麻酔後に目が覚めるまで15~30分程度です。 | 手術時間は約15分で、全身麻酔後に目が覚めるまで30~60分程度です。 | 診察時にご説明 |
| 入院期間 | 4泊5日〜 | 日帰り〜 | 2泊3日〜 | 診察時にご説明 |
| 手術費用(3割負担) | 約23~28万円(3割負担) | 約23万円~(3 割負担) | 約20~25万円(3 割負担) | 診察時にご説明 |
| 血液をさらさらにする薬を内服中の方 | 診察時にご説明 | 手術を受けられる | 手術を受けられる | 診察時にご説明 |
| 適応となる前立腺の大きさ | 50ml以上 | 診察時にご説明 | 80mlを超えると効果が劣る | 診察時にご説明 |
※上表は本文に記載の内容をまとめたものです。実際の適応や費用は診察時に詳しくご説明します。
アクアブレーション治療(ロボット手術)
2023年に保険収載された、先端の術式です。電気メスやレーザーを用いず、天然由来の”水(アクア)”の力で肥大した前立腺を切除します。熟練の泌尿器科医が超音波を用いて前立腺肥大の切除範囲を決定し、その指示に従ってロボットが迅速かつ精密に前立腺の切除を行います。尿の通り道が広がることで、尿の勢いが良くなることが見込めるだけでなく、膀胱への過剰な刺激も軽減し、頻尿・夜間頻尿の蓄尿症状も改善が期待できます。従来手術より手術時間が短く、出血が少ないことが特徴です。さらに、従来手術では手術により失わることが多かった射精機能を温存することが望めます。
メリット
- 前立腺の切除に、天然由来の”水”を用います。
- ロボットが前立腺の肥大部分を自動で切除するため、切除の時間が短く、誤差も少ないです。
- ロボットの精密な動きにより、射精管(精液の出口)の温存ができれば、手術後も射精機能・勃起機能の維持が期待できます。
- ロボットが切除を行うため、術者による技量の差が少ないです。
- 従来の手術より手術・麻酔時間が短く、出血量が少ないため、体への負担が小さいです。
- 術後の後遺症である尿失禁や尿道狭窄(尿の通り道が狭くなる)の発生率は、従来手術より少ないといわれています。
デメリット
- 保険適用は前立腺体積が50ml以上の比較的大きな症例に限られます。
所要時間
前立腺の大きさがアボカドのように大きくても、切除時間は10分以内で切除可能です。全身麻酔後に目が覚めるまで1~1.5時間程度です。
| 入院期間 | 4泊5日〜 |
|---|
| 3割負担 | 約23~28万円(3割負担) |
|---|---|
| 2割負担 | 約15〜19万円 |
| 1割負担 | 約8〜9万円 |
※2割・1割負担の金額は、3割負担額から算出した概算の参考値です。実際の金額は診察時にご確認ください。
※高額療養費制度の適用対象です。詳しくはお尋ねください。
経尿道的水蒸気治療(WAVE / Rezum)
Rezum(レジューム)という機器を使用する経尿道的水蒸気治療は、尿道から前立腺内に特殊な針を刺して、103度の水蒸気を前立腺内に噴霧します。高温の水蒸気にさらされた前立腺組織は壊死し、1~3ヵ月かけて体内に自然に吸収されます。前立腺の体積が縮小すれば、尿が出やすくなります。2022年に保険適用となりました。
メリット
- 治療には、天然由来の“水”を用います。
- 手術時間が短く、出血はほとんどないので、体に負担が少ないです。
- 血液サラサラの薬を内服している方も手術を受けることができます。
- 前立腺を切ったり、削ったりすることがないので、術後の痛みが少ないです。
- 射精管(精液の出口)を温存できれば、手術後も射精機能・勃起機能の維持が期待できます。
- 術後の後遺症である尿失禁や尿道狭窄(尿の通り道が狭くなる)の発生はほとんどありません。
デメリット
- 手術後は5~7日間程度、尿道カテーテルの留置が必要です。
- 効果を実感するまで約1-3カ月程度かかります。
所要時間
手術時間は約5分で、全身麻酔後に目が覚めるまで15~30分程度です。
| 入院期間 | 日帰り〜 |
|---|
| 3割負担 | 約23万円~(3 割負担) |
|---|---|
| 2割負担 | 約15万円〜 |
| 1割負担 | 約8万円〜 |
※2割・1割負担の金額は、3割負担額から算出した概算の参考値です。実際の金額は診察時にご確認ください。
※高額療養費制度の適用対象です。詳しくはお尋ねください。
経尿道的前立腺吊り上げ術 (Urolift)
専用の機器を用いて尿道から前立腺にインプラントを挿入して、前立腺肥大の圧迫により狭くなった尿の通り道を広げます。前立腺組織を切ったり、焼いたりすることがないため、体に負担が少ないです。また術後すぐに尿道が広がりやすいため、早期改善が期待できます。2022年に保険適用となりました。
メリット
- 世界では約30万人の治療実績があり、信頼できます。
- 手術時間が短く、出血はほとんどないので、体に負担が少ないです。
- 手術に”熱”を用いないので、手術翌日に尿道カテーテルを外すことができます。
- 術後2週間程度で通常の生活に戻ることが期待でき、早期社会復帰が見込めます。
- 血液をサラサラにする薬を内服している方も手術を受けることができます。
- 前立腺を切ったり、削ったりすることがないので、術後の痛みが少ないです。
- 射精管(精液の出口)を温存できれば、手術後も射精機能・勃起機能の維持が期待できます。
- 術後の後遺症である尿失禁や尿道狭窄(尿の通り道が狭くなる)の発生はほとんどありません。
デメリット
- 80mlを超える大きな前立腺では、効果が劣ります。
- 前立腺の形によっては、この治療が向かない方がいらっしゃいます。
所要時間
手術時間は約15分で、全身麻酔後に目が覚めるまで30~60分程度です。
| 入院期間 | 2泊3日〜 |
|---|
| 3割負担 | 約20~25万円(3 割負担) |
|---|---|
| 2割負担 | 約13〜17万円 |
| 1割負担 | 約7〜8万円 |
※2割・1割負担の金額は、3割負担額から算出した概算の参考値です。実際の金額は診察時にご確認ください。
※高額療養費制度の適用対象です。詳しくはお尋ねください。
経尿道的前立腺切除術(TURP)
内視鏡を尿道から挿入し、電気メスで肥大した前立腺組織を切除する術式です。長年にわたり標準的な手術として行われてきた方法で、多くの実績があります。当院では、前立腺の大きさや患者さんの状態に応じて、この術式を選択する場合があります。手術時間や入院期間、費用は、前立腺の大きさや患者さんの状態によって異なるため、診察時に詳しくご説明します。
手術を担当する医師
加藤 大貴(泌尿器科医長・医学博士)が担当します。日本泌尿器科学会泌尿器専門医・指導医、日本排尿機能学会専門医、日本小児泌尿器科学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医です。
Q&A
前立腺の役割は何ですか?
精液の一部を作ります。前立腺液を分泌して、射精時の精子に栄養を与え、精子の運動を盛んにします。
正常の排尿の回数や1回の排尿量の目安はどの程度ですか?
昼間は5~7回、夜間は0回で、年齢によりますが、1回の排尿量は 200~400ml程度です。
どんな症状を感じたとき、どのようなタイミングで泌尿器科に受診するのがお勧めですか?
寝てから起きるまでの間に2回以上トイレのために起きる、仕事中やゴルフ、バス旅行、映画館などの日常生活が頻尿のため邪魔される、あるいはおっくうに感じる場合が受診のタイミングです。
何歳から前立腺肥大症になりますか?遺伝しますか?
一般的に50歳以降です。遺伝の影響があるといわれ、父親や兄弟に前立腺肥大症がある方は、前立腺肥大になりやすいと報告されています。
前立腺肥大は進行しますか?
進行します。前立腺肥大症の患者さんの場合、年間1.6~2.6%の割合で前立腺が大きくなると報告されています。前立腺が大きい方は、特に増大するスピードが速いという研究があります。一方、年齢を重ねても前立腺が大きくならない方もいらっしゃいます。すべての男性が年齢を重ねると前立腺が肥大するというわけではなく、個人差があります
前立腺肥大の方は日本にどれだけいますか?
前立腺肥大症があり、おしっこの悩みを抱えている方は60歳台で6%、70歳台で12%、80歳台以降は25%程度といわれています。年間約3万人の方が、前立腺肥大症の手術を受けています。
前立腺肥大の手術を受けると、薬はやめられますか?
術後は前立腺肥大症の薬をやめることが期待できます。
血液をさらさらにする薬を飲んでいますが、手術は受けられますか?
経尿道的水蒸気治療(WAVE / Rezum)や経尿道的前立腺吊り上げ術(Urolift)は、血液をサラサラにする薬を内服している方も手術を受けることができます。
紹介状がなくても、手術の相談はできますか?
一般的に、総合病院ではかかりつけ医からの紹介状が必要ですが、当院では紹介状がない方でも受診が可能です。週3日、外来を設けております。
前立腺肥大症の手術について、ご相談ください
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